お話その3
生きるか死ぬかの壮絶体験から生まれたものは…
アレルノン生みの親に開発秘話を聞きました。
株式会社ヤサカ 会長
八坂正博氏
1951 年滋賀県高島市生まれ。地元の会社経営者として精力的に活動し、激務の日々を送っていました。ある体調の異変に気付いた2001 年。その時自身の体はすでに、もう取り返しがつかないのではないかと危ぶまれる状態にまでなっていました。しかしその後あきらめることなく食事法を実践し、周囲も驚くほどの奇跡的な回復を遂げます。その時の経験から生まれたのが、「アレルノン」でした。
体調不良をきっかけに自身の食生活を大きく変えられた八坂会長。ご自身の経験が人々の生活の一助となればの想いから、「アレルノン食品事業部」を開設されました。
今回は開発当時の様子を振り返り、お話をお聞きしました。
日本人に合った良質な乳酸菌をとる
--なぜお米でヨーグルトを作ろうと思われたのですか?
八坂会長--当時食事法*を実践する中で、良質な乳酸菌をとろうと思いました。食事法の基本的な考え方は、日本人は本来の日本食を持って現代病に立ち向かっていこうという考え方です。その観点から、日本人に合った乳酸菌は何かと考えました。真っ先に思い浮かんだ食材が地元、滋賀県の伝統食品「鮒ずし*」でした。これは昔から「薬喰い」として様々な病気を治す言い伝えのある発酵食品でしたから。
当時動物性のものは食べていませんでしたが、鮒ずしは原料の鮒ではなくそれを漬け込んでいる飯(いい。鮒を漬け込むための炊いたお米)の方に乳酸菌がいるというのは調べればすぐわかりました。
食事法の実践中で生の玄米を粉にしたものが手元にあったので、それに発酵した飯を入れてヨーグルトみたいにして食べようと思い立ちました。
--確かに飯(いい)は独特な癖がありますから、毎日そればかり食べるのは大変ですね。
ヨーグルト風に作ってみたら、食べやすかったのですか?
八坂会長--ぜんっぜん!(笑)ぬかくさ〜いニオイでね。
今のアレルノンのようなヨーグルトらしいものになるまで、それは大変な試行錯誤が必要でした。
--なるほど。すぐにあのあっさりとしたアレルノンになったわけではないのですね。
八坂会長--全く遠かったですね。色々と怪しげなもんを作って食べてみていました。
あるとき作っているもののひとつが、ものすごいカビていたこともありましてね。失敗かと思いましたが、よく見るとカビのような部分は上層だけに溜まって膜になっていて、その膜をべろーんとめくってみると下にヨーグルト状のものがブクブクと湧いている状態になっていました。
--カビのような膜の下に湧いたブクブク…
八坂会長--そんなん食うてみい、言われて食べますか?
--食べれません!
八坂会長--でも私は食べました。
--ぎゃー!
八坂会長--普通の人からしたら考えられへん、見た瞬間捨てるものやろうけど。
私の当時の体調からしたら、それを食べても食べんでも、このままではどうせ死ぬって思ってましたから。
とにかく食べて試すしかないですよ。明日死ぬかもしれないと追いつめられている人間に「犬のうんこ食べたら死なんで済むで」って言ったら食べますよ。そういう精神状態なんです。
--うんこはともかく、壮絶なお話です。
pHの低い乳酸菌を発見!
八坂会長--良い乳酸菌を探す努力もしましたよ。鮒ずしの飯(いい)の中には沢山の種類の乳酸菌がいるが、そのうちのどれがいいのか試作品を作って分離を試してみたりしました。
そのうちの一つで、ものすごく酸っぱく発酵していたものがありました。pHを測ってみると2.8と強い酸性を示していたので、これはええ、胃散にも負けへん乳酸菌を分離できるかも、と思いました。
--今のアレルノンに使われている菌ですね!
八坂会長--この菌を使っての商品化の際は周りからはことごとく反対されました。こんなヨーグルト酸っぱすぎるから価値が無いと言われました。
私はそれは逆で、世の中に無いくらい酸っぱいから価値があるんだと言い張りましたよ。
人の言うことを聞かん性分ですから、反対を押し切ってそのまま商品化しました。
--私も最初は酸っぱくてびっくりしましたが、毎日食べていると不思議とあの酸味が美味しく感じるようになります。
八坂会長--今のはまだまろやかになっていますが、最初はもっと角のある味だったんです。
選ばれた米で発酵させているうちに、乳酸菌がエサに合わせて変化してきたのではないかと思っています。
--生きた菌ならではの面白いお話ですね。
「こんなもんやろ」と思わずに進む
--商品化しようと思われたのはどの段階ですか?
八坂会長--なんせ美味しくなかったので、どうすれば美味しくなるだろうと思って米を変えたりしていました。
ある時米を洗ってから作ってみたらやっとぬか臭が消えました*。美味しくなったんです。
これなら一般の方にも食べて頂けるのでは?と思ったのがきっかけです。
--色々と工夫された結果いいものができたんですね。
八坂会長--普通は作ってみて大した出来映えでなくても「こんなもんやろ」と思ってしまうかもしれません。でも「なんでできへんのやろ?」「なんで美味しくないんやろ?」というひっかかりを追求していきます。
すると面白いもんができるんです。
大事なのは、「こんなもんやろ」と決めつけて止めてしまわんことです。
--体調に大きな不安を抱えられる中でも、諦めず追求された精神力に驚きます。
それに、生きるか死ぬかという時によく美味しさにまでこだわられましたね。
八坂会長--そら、最初のヨーグルトのまずさと言ったら、話にならんくらいやったからね!ぬか臭が!
試しに発酵したぬかをストーブであぶってみ?家中くっさいですよ! はっはっは!
--やめておきます(笑)。
今は笑い話になってらっしゃいますが、当時の切実さが伝わってくるお話でした。ありがとうございました。
誕生秘話を聞いていると、なんとも不思議な(ちょっと食べるのが怖くなる)アレルノンの原型ですが、そこから菌を単離して種菌にし、美味しいお米ときれいな湧き水を使って発酵させ、今のアレルノンが完成しました。実際商品化してみたところ沢山の方からの反響があり、現在に至ります。
会長はよく「食べて不健康になったものは、食べて健康に戻したらいい」とおっしゃいます。
自身の体調不良をきかっけに気づかれた食事や乳酸菌の大切さを皆様にお伝えするために、今日も生き生きと元気に活動されています。(聞き手・森下千)
*食事法...現在の食生活は、日本食だけにとどまらず、洋食、中華、多国籍料理など多岐にわたっていますが、日本人である私たちは本来の日本食をとって現代病に立ち向かっていこうという方法です。
各人種は本来はその人種に応じた食事法や栄養学に適応しているという考え方がもとになっています(会長談)。 ※食事法には様々な系統があり、その方法論は違います。
*鮒ずし...びわ湖など淡水で獲れるニゴロブナを炊いたお米に漬け込み、乳酸菌などで発酵させて作る伝統食品。独特の香りが苦手な人も多い食材ですが、昔から家庭では「腹を壊したら鮒ずしを食べなさい」と言われていたそうです。現在は希少価値があり、お酒の珍味などに重宝されています。
鮒ずしの中にはたくさんの乳酸菌がいますが、お米などについていた植物由来のものが主です。
*ぬか臭をとる...開発当時は米を洗って作っていましたが、その後自家製粉をすることによりぬか臭が消えることがわかり、自家製粉にこだわっております。
アレルノン5つのいいところ
山ライン